研究概要 |
(I)ヌードマウスに継代移植後、二重寒天培地法を用いて3名の患者から4株のヒト骨肉腫細胞株(OST1、OST1ーMは化学療法と放射線治療後の肺転移巣から得た細胞株である。OST1とOST1ーMの染色体数は共に43である。OST1はヒト正常染色体が32本、マーカー染色体が11本であるのに対し、OST1ーMのマーカー染色体は15本に増加していた。OST1ーMのマーカー染色体には異常に長いものが含まれており、遺伝子増幅の可能性を示唆していた。(II)ヒト骨皮質から骨γカルボキシ-グルタミン酸含有蛋白(BGP)を精製した。このBGPをBALB/Cマウスに免疫して5種の抗体(1C3、5E10、7F4、10A4、10E8)を得た。分子量はともに約5,800の単一バンドを示し、同じ蛋白を確認していた。正常ヒト骨芽細胞と骨細胞に反応したが、軟骨細胞、破骨細胞との反応はみられず、またヒト骨肉腫細胞株(OSTI、OST1ーM、OST2、OST3、OST4)に反応した。つまり、この抗体が骨原発腫瘍の血清診断に有用なことを示唆していた。 (III)ウイスター系ラットの頭蓋骨よりアルカラホスハターゼ染色強陽性の骨芽細胞のコロニーを分離して、3種類の細胞株(Rob1、5、24)を得た。Rob5にCーmyc+EJrasの組合せで癌遺伝子をトランフフェクトすると、20foci/5μgDNAの効率で、またEIA+EJras導入の場合は1facus/5μgDNAの効率でトランスホーマントが分離された。トランスホーマント細胞の増殖能は増加しており、ヌードマウスに造腫瘍性を示していた。各トランスホーマントには癌遺伝子が存在することをSoutyern analysesで確認した。つまり正常骨芽細胞の悪性化においても、2種以上の癌遺伝子の材能が関与する可能性を示唆していた。
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