1)ヒト骨肉腫の手術材料をヌ-ドマウスに移植し、6株の長期継代移植株を得た。ヌ-ドマウス移植腫瘍を組織培養系に移し、4株の細胞株(OST1、OST1M、OST2、OST3)を得た。OST1、OST1Mでスフエロイドを作り、10Gyの単独照射を行った。その増殖は完全に抑制されるところから、放射線感受性を示す骨肉腫の存在を確認した。2)ヒト骨皮質から抽出精製することに成功した骨γカルボキシ、グルタミン酸含有蛋白(BGP)を用いて以下の研究を進めた。このBGPをBALB/Cマウスに免疫して、5種のモノクロ-ナル抗体(1C3、5E10、7E4、10A4、10E8)を得た。いずれの抗体も骨肉腫27例中全例と反応した。しかしその他の骨、軟部悪性腫瘍との反応は認めなかった。これらの抗体は骨肉腫細胞の細胞質と強く反応したが、腫瘍性類骨との反応は認められなかった。5種の抗BGP抗体が認識する抗原をWestern blotとアミノ酸分析で検討したが、ヒトBGP(Posterら)と一致していた。われわれの抗BGP抗体は骨肉腫の組織学的診断に極めて有用なことを示していた。3)ヒト骨肉腫由来培養株(KIKU)から2種の抗骨肉腫モノクロ-ナル抗体(2D3.2H10)を得た。免疫組織学的検索では12例の骨肉腫全例と強く反応した。この抗体の認識抗原をSDSーPAGEで解析したが、分子量75kdの同一抗原上の異なる抗原決定基を認識していた。認識抗原としてアルカリフォスファタ-ゼ活性が認められたが、肝、腎、小腸、胎盤との反応性はなかった。ELISA法を用いて骨肉腫患者血清中の骨肉腫関連抗原を測定した。骨肉腫5例全例に、2D3、2H10を認識する抗原が同定された。この抗体による骨肉腫の血清学的診断の有用性を示唆していた。
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