(1)ヒト骨肉腫組織をヌ-ドマウスに移植し.移植腫瘍細胞を2重軟寒天培地で培養することによって4株の骨肉腫培養細胞株を樹立した。染色体数のモ-ドはOST1とOST1ーMが43.OST2は52〜56.OST3は74であり.ヒト由来の核型を示した。4株の骨肉腫細胞はYuhasの方法でスフェロイドを構築した。OST1とOST2スフェロイドはX線照射によって成長が抑えられるところから.放射線感受性を示す骨肉腫の存在を確認した。しかしOST1スフェロイドは、X線照射6時間後にトリプシン処理遊離単細胞のcolony formation assayを行うことにより生存率の増加が認められた。つまり骨肉腫細胞にはX線による潜在的致死損傷の修復(PLDR)が認められた。一方、X線照射後に1ーデアザアデノシン(C^1ーAdo)処理を加えることによりPLDRは50%抑制された。このことは、アデノシンのデアザ誘導体には放射線増感作用があることを示していた。(2)ヒト骨肉腫細胞と細胞周囲の間質マトリックス蛋白(フィブロネクチン.ラミニン.コラ-ゲン)との対応状態を観察した。14例のヒト骨肉腫の凍結切片を作製し、マトリックス受容体ファミリ-であるintegrinのVLA1〜6に対する抗体を用いて免疫染色を行った。フィブロネクチン受容体であるVLA4が14例の骨肉腫全例に認められたが、ラミニン受容体であるVLA1.2.6の発現はまれであった。正常骨芽細胞のラミニン受容体は強く発現しているところから、骨芽細胞の腫瘍化とラミニン受容体の不活化との関連性が示唆された。一方、骨肉腫細胞の筋肉内や血管内への浸潤部ではVLA3(フィブロネクチン.ラミニン.コラ-ゲン受容体)の発現増強を認めた。このことは、ある種のマトリックス受容体の発現増強と、骨肉腫細胞の間質組織への浸潤能力には密接な関連性があることを示していた。
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