研究概要 |
本年度は主として正常組織の性状を把握し, それを培養下で再現することを目的として実験を行った. 検索対象組織は計画通り顎顔面頭蓋の骨軟骨組織口腔軟組織, 筋組織とした. 骨軟骨組織については主として下顎頭について検索した. まずその発円の起源については, マウスを実験動物として検討した結果, 胎生の13日に下顎頭軟骨の原基が生じ, 胎生15日に軟骨に分化することが明らかとなった. つぎに, 下顎頭における軟骨内骨化の特異性をウシ胎児を用いて組織学的, 生化学的に検討した. その結果, 下顎頭軟骨の骨化過程は, 長管骨の内軟骨性化に比び, 細胞基質, 特にコラーゲンの型分布や量に違いがあることが示された. また, 下顎頭軟骨を抗原としたモノクローナル抗体を作成し, 現在その特異性について, 酵素抗体法を用いて検討中である, 口腔軟組織は口蓋粘膜を中心に, in vivoの変化をとらえ, その状態をin vitroで再現することを試みた. in vivoにおいては組織切片を作成, 光学顕微鏡下で観察し, その上皮, 結合組織の成長発育変化を検討した. また, 生化学的には胎生期において非コラーゲン性の構造タンパクが多いことが示された. in vitroにおいてはまず, 組織培養, 細胞培養の系の確立を図った. 培養液はDMEMにウシ胎児血清を加えたものとした. 細織培養法では幼若期にコラーゲン合成が活発であることが明らかとなり, 細胞培養法では現在外部刺激に対する反応性を検討中である. 筋組織は機能特異性を酵素組織化学的に検討した. すなわち, 咬筋, 顎二腹筋について, ATPase染色により筋線維タイプの分類を, NADH-TR染色により酵素活性の消長を分析した. その結果, これらの筋の筋線維の構成の違いは, 筋深層部に認められ, 咬筋はタイプ2線維がほとんどであるのに対して, 顎二腹筋においてはタイプ1, 2A, 2B線維が混在していた. 63年度はこれらの結果をもとに, 顎顔面頭蓋の病態の解明を進めていく予定である.
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