研究分担者 |
荻野 弘之 東京大学, 教養学部, 助手 (20177158)
高橋 哲哉 東京大学, 教養学部, 助教授 (60171500)
宮本 久雄 東京大学, 教養学部, 助教授 (50157682)
山本 巍 東京大学, 教養学部, 助教授 (70012515)
杖下 隆英 東京大学, 教養学部, 教授 (00012261)
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研究概要 |
「死の哲学」は人間の心的機構の生理学的記述とは全く違った立場から, すなわち第三者的な対象化された個別的存在者が死滅することではなく, いわば世界の存立と価値を支える他ならぬ〈このわたし〉を消去するという事態がいかなる意味でありうるのか, を問うことによって構想されるはずであろう. 本年度は主としてこうした死を語る言語の意味論の視点から, 必要な文献を順次購入整備すると共に, 12月以降数回の共同討議の場(そのうち3回は合宿の形で集中的な)を設けた. 具体的は研究の成果としては, (1)「伝達の道具」として第一義的に考えられてきた力語の本質規定についての根本的な反省を通じて〈こころ〉言語の存在を析出し(山本), (2)快・苦について語る言表の孕む私秘的性格を, 価値判断の普遍化可能性との相関において, 主としてギリシア哲学の展開に即して分析し(荻野), (3)近代的な「心ー身」二元のいずれとも異なる「身」「肉」の位相を, 古代キリスト教思想, 特にギリシア教父の人間学のうちに発掘し(宮本), (4)心身論や行為論を扱う際の中核的概念である因果性の範〓を, 英国古典経験論とその後の近世哲学の枠組の中で位置づけ, 現代哲学における指示, 記述, 同一性等の諸問題との交錯にも光をあてた(杖下). また, (5)身体や他者の問題への現象学的接近を目指して, デカルトの「思惟」と狂気の関係を現代仏語圏の諸思潮との対質をふまえて吟味し(高橋), (6)夢論というユニークな視角から, 我々の日常的な現実感覚を支える意識の特性について, 特に言語操作との関係で独自の考察を加えた(藤本). この他, 心身問題における所謂「同一説」の批判的検討, 機械の動作と対比した人間行為の意味論(伊藤), 技術の規範と人為性の関係などがすでに問題として組上にのせられており, 次年度以降, 具体的実績として発表・報告される予定である.
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