研究概要 |
高エネルギー重イオン反応は極端な高温・高密度状態を地球上で実現するもので,物理学の最重点課題の1であるが,その反応の複雑さのために全貌を促えるのは不可能とされていた. 此れに対し我々は世界で最初に運動量測定可能な原子核乾板(MES)を開発し其の事を可能とした. 1.米国ブルックヘブン国立研究所(BNL)に於いて核子当り15GeVのSiイオンが加速されるに当り,我々はMESによりSi+W反応の全貌を促える実験をBNLに提案し採択され(題目番号BNLno.826),実験の為の加速器使用が許可された. 2.我々のグループの1部は上記許可に基づきBNLに於いて昭和62年5月,12月,持参した原子核乾板箱を,BNLの高〓場〓石中にセットし,照射を行った. 照射および現像は成功し,夛くの反応事象が記録された. MES製作のために補助金を使用した. 3.原子核乾板は其の情報量が極めて夛いだけに,高能率,高精度の解析は極めて重要である. 我々は本補助金を使用し,半自動原子核乾板解析装置2台を製作し,結果を視覚化するためのプリンター類の整備を完了し,其れに必要なソフトウェアーの製作も完了した. 4.上記の2系列の半自動観測装置の整備完了に基づき,昭和63年初頭より其の解析を開始,核子当り15GeVのSi核とタングステン核の中心衝突事象数ヶの例につき,放出粒子の夛重度,角分布,運動量分布,ラピディティ分布,方位角分布について完全解析を行った. 此は世界で始めてのデーターであり,各方面の大きな関心を呼びつつある. 5.今後一層の解析速度を上げ,我が国で開発されたMESにより世界に誇るデーターを早く得たい. そのため解析の人員を殖す事を計画している. またそれに必要な器材も整備した.
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