研究概要 |
宇宙の諸階層における構造は密度がほぼ一様な自己重力系に存在した微小な密度ゆらぎが非線型段階まで成長し, ついには分裂した結果生じたと考えられる. 初期のゆらぎのいかなる性質が最終状態を決定しているかという共通の問題意識を持って以下の三つの現象が精力的に研究された. 1.宇宙の大局的構造の研究 銀河等の小スケールは, ゆらぎが成長した結果と思われるが, 宇宙の大域的な構造は一様等方である. これを初期宇宙のインフレーションに依って説明するアプローチが有力と考えられている. そこで閉じた宇宙において, プランク質量より十分小さな質量のスカラー場があると, インフレーション宇宙は一般的現象である事を, 解明した. またゆらぎの成長の観点では, ストリングの存在による銀河形成が研究を研究した. 2.星団や恒星の形成過程の研究 等温ガスディスクの重力不安定性を, 線型解析及び非線型数値実験により調べた. 磁場に貫かれたディスクの場合について, 線型解析で調べ, 重力不安定性の磁場の方向(ディスクと磁場の関係)への依存性を解明した. 更に, 磁場のない場合にゆらぎの成長を非線型段階まで追跡し, 星間雲の分裂の形態及び分裂片の質量分布を導出した. 3.中性子星やブラックホールの形成過程の研究 中性子星の形成過程である超新星爆発過程についての数多くの研究を実行した. これらは1987年に大マゼラン星雲で観測された超新星爆発を契機にするものが多い. その内, 爆発時に発生するショック面におけるゆらぎの成長の数値実験を遂行した. ゆらぎが, レーリーテーラー型不安定性のため非線型成長し, 外層部分が分裂し内部領域は混合される事がわかった. この事は観測結果と適合すると思われる.
|