研究概要 |
高効率・高分解能のGe検出器をもちいて, 光量子放射化法により岩石鉱物中に微量に含まれているBaやSr,Rb,Y,Zr,Nb,Ni,Crを精度よく定量分析するため, 予備的な実験を繰返し, この方法では分析できなかった100PPM以下のBaやNi,Cr,Yを正確に定量分析できるように改良した. これにより, 放射化に要する時間と試料の量, 不感時間と分解能の関係を明らかにすることに成功し, 光量子放射化分析法の大幅な改善と進歩が期待できる. この方法を利用して, 島根県隠岐島・島後に産出する約80個の火山岩とそれに含まれる造岩鉱物, 更に40個程の上部マントル及び下部地殻に由来する捕獲岩とその構成鉱物について, 前述の微量元素の分析を行なった. また, 九州の由布鶴見岳の火山岩に含まれている地殻内部の捕獲岩についても, 同様の分析を行なった. その結果, かんらん石と輝石, グーネット間のNiやCf,Yの分配の組成依存性と, 定性的ではあるが圧力依存性を見積ることに成功した. 輝石と角閃石, 斜長石間のBa,Sr,Rb,Y,Zrの分配の組成依存性も明らかにし, 定性的ではあるが温度依存性も見積ることができた. また同様の分配を鉱物とマグマ間についても求め, マントル内でBaやSr,Rbのソースとなる主要造岩鉱物は存在し得ないことを明らかにした. この結果, 火山岩中のこれら微量元素の変化に対応して, BaやSr,Rbはマントル内で移動し, マグマを発生する場所に常に集まってきていることが確実となった. また今回は, 島弧の火山岩に特に乏しいNbについて,マントル内でのソースとなり得る鉱物を明らかにするため, 天然の試料の分配からスピネル鉱物に注目して集中的に分析を行なった. しかし, マントル中のスピネルや, クロムスピネル, クロマイト, マグネタイトにはNbはほとんど含まれず, Nbのソースとなるマントル鉱物は存在し得ないことが明らかになった. Nbの挙動に関しては次年度以後更に研究する必要がある.
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