研究概要 |
パルスイオンビーム発生用強力イオン源の動作機構を明らかにするため,主としてクライオ陽極イオン源を用いて,種々の計測を実施した. 1.窒素の氷陽極(温度20K)を用いて,高純度(窒素100%,最高),高エネルギー(〜500KeV)のビームを,再現性良く繰返し(0.1Hz)発生した. ダイオード電圧が比較的低いときは陽極プラズマの温度も低く,ビーム成合は ほとんどN^+であるのにたいして,電圧が高くなると陽極プラズマの温度も上昇し,N^<++>がN^+とほぼ同量ビーム中に含まれることがわかった. ビーム種とそのエネルギーの時間分解測定より,陽極プラズマの温度の時間変化を見積ることができた. 2.ビーム特性に直接影響を及ぼす陽極プラズマを分光測定により詳しく調べた. 前項と同様のビーム引出し形磁気絶縁ダイオードを液体窒素で冷却し,軽水または重水,あるいは両者の混合物の氷陽極を用いて,Hα,Hβ,Dα,Dβ線の発光強度を測定した. 各スペクトルの時間,空間分布より,ダイオード内のH及びD原子の広がり速さが約3cm/μSであり,熱速度よりも大きく,質量に依存しないことがわかった. 3.ダイオード内のプラズマや中性原子の挙動をさらに詳しく調べるために,共鳴光干渉を利用する密度測定を実施した. 窒素レーザー励起の色素レーザーとパルスイオン源用電充の同期運動の問題を解決し,フック法によりHα付近の干渉縞を記録した. 初期の結果として,ダイオード主電圧パルスの持続時間よりもあとの時益の2p準位のH密度が測定でき,これより基底準位の原子密度が約10^<16>cm^<-3>であることがわかった. 4.以上のほか,主電源の出力電圧パルスを分岐使用するジッターなしの時間分解ビーム粒子分析器の開発と,高輝度収束形クライオ陽極イオン源の稼動に成功し,次年度にそなえた.
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