研究概要 |
1.^<13>C,^<18>Oラベルトシレートの合成:ネオファルアルコール, 2ーフェニルプロピルアルコール, 2ーフェニルエチルアルコール(無置換体及びpーメトキシ体), ベンジルアルコールの反応中心炭素の^<13>Cラベル体を95%^<13>C炭酸バリウムより合成した. スルホニル^<18>Oラベルトシルクロリドを98%^<18>O重水より合成し, アルコールを^<13>C, ^<18>O二重ラベルトシレートに変えた. 2.^<13>CNMRによる^<18>Oスクランブリングの追跡:二重ラベル体のアセトリシス反応をNMR測定管中で行い, 原系エステルのアルコキシ酸素への^<18>O同位体の取り込みを^<13>Cシグナルの同位体分裂ピークの観測により追跡し, その経時変化より原系復帰速度を求めた. 3.原系復帰とソルボシス機構:ネオフィルトシレートのアセトリシス反応では全反応を通じて, ^<18>Oのスクランブリングは検出されず, 現在仮定されている原系復帰のないアリール関与イオン化律速のソルボリシス機構であることが実験上初めて実証された. 2ーフェニルプロピル系では原系の一級トシレートへの復帰はなく二級の転位トシレートへの復帰には^<18>Oスクランブリングが認められた. しかしカチオンーアニオンの再結合でスルホネート部の三つの酸素は等価でなく, 元の^<16>Oがかなり優先的に再結合する結果が得られた. この事実はintimateイオン対ではカチオン, アニオン間の相互作用が強く保たれているという重要な情報を与える. 2ーフェネチル系の無置換体の原系復帰はプロピル系と同様不完全スクランブリングで起こる. 一方, pーメトキシ体では完全スクランブリングで起こっており, 溶媒介在イオン対ではアニオン部の三つの酸素は完全に等価な構造をもち, 両イオン対の性質の差に対する情報が得られた. ベンジル系では大きな^<18>Oスクランブリングが観測され, 原系復帰速度はソルボリシス速度と同程度であり, 現在一般に考えられている求核関与機構ではなくイオン化機構をもつという新事実が明らかになった.
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