研究概要 |
(1) 二核モリブデン錯体の分子設計と配位窒素分子の固定ー窒素分子をアンモニアに固定するのに要する6電子を供給するため,ジニトリル(L)を架橋配位子とする二核モリブデン窒素分子錯体μーLー[Mo(N_2)(dppe)_2]_2(dppe:1,2ービス(ジフェニルホスフィノエタン))を合成し,配位窒素分子の活性化について調べた. その結果,今回得た四種の二核錯体では, いずれも錯体1モルあたり0.27ー0.71モリのアンモニアの発生が観測された. このことから, 二核化することによって, 一層効果的に配位窒素分子を固定できることが判明した. 今後の操作の改善によって,さらに高い窒素固定の可能性が確実に期待できる. (2) 二核マンガン錯体の分子設計と光合成系IIに含まれるマンガン色素源の機能の解明ー光合成系IIにおける水の酸化反応の触媒である色素源として,二核あるいは四核のマンガン錯体が関与していることが知られており, 種々の酸化状態にある二核マンガン錯体の分子設計は, 光合成系II中に含まれるマンガン錯体の構造・特質を理解する上で重要な課題である. 我々は, 新規な二核化配位子2,6ービス[ビス(2ーピリジルメチル)アミノメチル]ー4ーメチルフェノールあるいはトライポッド型配位子トリス(2ーピリジルメチル)アミンを含む二核マンガン(II,II),(II,III),(III,IV)および(IV,IV)錯体を得た. このうち,マンガン(II,III)およびマンガン(IV,IV)錯体は, それぞれ光合成系IIの休止状態および活動状態にあるマンガンタンパクのモデルとして内外から高く注目された. 63年度以降の研究では,常温で水を酸化し得る錯体触媒の分子設計をめざしたい. (3) 直線状シアン化物イオンを架橋配位子とする特異な磁気的相互作用を有する二核クロム(III)錯体の設計・開発ー1個のシアン化物イオンで架橋した[Fe(en)_2CrCNCr(CN)_5]型錯体を得ることに成功した. その磁気的相互作用の解明は63年度に行う.
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