研究概要 |
ペルフルオロエノラート(以下^F__ーエノラートと略記)の生成法とその合成的利用に関する本研究の今年度の成果は, 次のようにまとめられる. 1.リチウム^F__ー2ープロペノラート生成法の開発 市販のヘキサフルオロイソプロパノール(HFIPA)に2当量のブチルリチウムを作用させるという簡便な^F__ーエノラート生成法の開発に成功した. さらに, HFIPAのナトリウムおよびカリウムアルコキシドにブチルリチウムを作用させると, それぞれナトリウムおよびカリウム^F__ーエノラートが生成することをも見出した. 今後, この^F__ーエノラート生成法を非対称系に応用して, その位置選択性, 立体選択性を検討する計画である. 2.リチウム^F__ー2ープロペノラートと求電子剤との反応 上記の方法で生成させたリチウム^F__ー2ープロペノラートと種々の求電子剤との反応を広範囲に検討した. その結果, たとえば酸塩化物との反応では対応する^F__ーエノールエステルが, カルボニル化合物との反応では対応するアルドール付加体(水和物として)が, 収率よく得られることを見出した. つまり, この^F__ーエノラートは, 通常のエノラートと同様のアンビデント求核性を示すことを初めて明らかにした. 3.リチウム^F__ー2ープロペノラートと有機金属試剤(求核剤)との反応 ^F__ーエノラートは, 通常のエノラートと異なり, 一種のポリフルオロオレフィンとしての"異常な"求電子反応性を示すと考えられる. そこで, リチウム^F__ー2ープロペノラートと種々のアルキルリチウム, Grignard反応剤との反応を検討した結果, β位がアルキル基またはアリール基で置換されたポリフルオロエノラートが, 収率よく生成することを見出した. 今後, このポリフルオロエノラートの反応性を検討していく計画である.
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