研究概要 |
(1)制限酵素によるDNA断片多型の南北集団間の比較:小笠原,青森のキイロショウジョウバエ集団よりそれぞれ44系統を用いて制限酵素によるDNA断片の多型を調べた. Adh,αーAny,Pu,αGpdh遺伝子領域を含む各約10Kbのプローブを用いて解析を行った. 認識部位の多型に関しては, そのほとんどが両集団に共通であり, 変異量は集団間, 遺伝子座間でほぼ一定であった. 一方DNA断片の挿入,欠失は各集団に特徴的であったが,変異量の南北間の差は見出せなかった. これらの結果は認識部位の多型が中立的てあるのに対し, DNA断片の挿入,欠失にはある程度の負の自然選択が働いといることを示唆した. (2)αGpdh遺伝子座における重複の多型:αGpdh遺伝子座の部分的な重複が, 集団内に多型的に存在することが明らかになった. この重複と, 他の認識部位多型および, アイソザイム多型との連鎖の解析から, この重複は選択に関して中立であり, しかもその起源は非常に古いことが示唆された. (3)生存に有利な突然変異のDNAレベルにおける探索:ローレー集団の逆位In(2L)t系統のAdh遺伝子座近傍に見出されたDNA断片(TypeB)について変異の年令の確率密度関数を用いた統計的検定を行ったところ正の自然選択の働いた可能性が示唆された. 挿入部分のシークエンシンクを行いこの因子の由来について解析したが, その結果は上記の結論を支持するものであった. (4)トランスポゾンの集団内における動態の調査:ローレー集団系統の第2染色体上のコピアおよびP因子の分布をinsitu hybridizateon法を用いて調べた. コピア因子に関しては, コピー数の分散は, 平均値より小さく, その差はコピー間のallelismの推定量とほぼ一致した. このことはコピアがcluplicativeに転移していることを示唆している. P因子に関しては, 分散は平均値より大きく, 他の転移メカニズム, もしくは正または負の自然選択の関与が示唆された.
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