研究概要 |
自然集団で進んでいる適応進化の分子的基礎を明らかにする目的で、4種類の研究を行い、次のような成果をえた。 1,以前の研究でキイロショウジョウバエの生存力について、相加遺伝分散について、南高北低の勾配が存在することを明らかにしたが、これの分子的基礎を得ために、南の集団の代表として、小笠原父島集団を北の集団の代表として青森集団を選んで分析した。各集団より43本の第二染色体を選び、8種類の制限酵素を用いて4種のProbeを用いて、Southern Bolt分析法により分析した。その結果、両集団共に多量の遺伝的変異がみられ、挿入、欠失が多く起こっていることが判った。DNAの長さに関する多型、DNA塩基座位に関する多型に関して、両集団には差が発見されなかったが、特異的挿入、欠失が南方集団で北方より有意に高頻度で発見された。これらは構造遺伝子の外側にあり、生存カポリジーンと考えられる。2.αGpdh座についての調査の結果、重複が世界的に多型をなしていることが判り、更に、日本の南北の集団でこの遺伝子座についての部分的三重構造が明らかになり、多重遺伝子族が集団中で形成される模型を示すことができた。更に部分的に重複した遺伝子が協調進化を示していることが明らかになった。3.米国のローレー集団のIn(2L)t多型を利用して、生存に有利な突然変異がこの逆位内に起こり、その頻度が約18%(逆位内での頻度)まで上ったことを示すデータを得た。この研究では、生存に有利な突然変異の発見法を開発し、これを利用した。4.トランスポゾンの転移率は重要であるにもかかわらず、その報告が皆無に等しい。1本の第二染色体より出発した多数の系統に自然突然変異を、自然選択圧を最小にして(約400世代間)蓄積した系統を用いて、copia,copiaの様因子412および17.6。hobo因子、I因子の転移率を調べた。
|