研究概要 |
植物ウイルスの防除法として弱毒ウイルスによる干渉作用を利用した方法が温室トマトやメロンのウイルス病防除法として利用されている. しかしながら,植物ウイルスの弱毒性とウイルスが持っている干渉作用の分子的本体については殆んど解明されていない. そこでまず,実用化されているトマト系TMV(TMVーL)の弱毒株(L||A)を用い,その弱毒性の分子的基盤を明らかにすることとした. タバコ培養細胞のプロトプラスト感染系を用い,TMVーLおよびL||Aの感染後のRNA合成とタンパク合成を調べた. その結果,L||Aの感染プロトプラストにおいては,遺伝子RNAの複製やコートタンパク質の合成が正常に行なわれているが,ウイルスの細胞間転移に関与している30Kタンパクの合成がいちじるしく阻害されていることが明らかになった. L||A感染タバコにおけるウイルスの収量が非常に低いことが知られているが,その原因はウイルスの複製能の低下によるのではなく,細胞間転移能の低下によることが確かめられた. 一方,Tiプラスミドを用いてL||Aの全長cDNAをタバコ染色体に導入し,弱毒ウイルスを発現するトランスゲニックタバコを作製する実験を開始した. その予備実験としてまず強毒TMVーLの全長cDNAをタバコ染色体に導入する実験を行った. その結果,期待通りのトランスゲニックタバコが得られた. このスランスゲニックタバコは幼植物のときからTMV症状を呈した. TMVのcDNAは種子を通って次世代に伝わることも確かめられた. 現在この技法を用いて,弱毒ウイルスL||Aのトランスゲニックタバコを作製中である.
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