研究概要 |
カワラタケ・ラッカーゼIII遺伝子のクローニングに当って,まずこの酵素のmRNAを単離するための培養条件の検討を行った. ラッカーゼ活性を増加させるためのキシリジン添加は明らかに効果があり,培養72時間付近が量も酵素活性上昇率が高かった. この条件下で全RNAの単離を行い,アガロース電気泳動分析より,28S-RNAと18S-RNAのフラクションが得られ,十分に長いRNA鎖の状態で単離されることがわかった. 次に,全RNAよりmRNAの単離を行い,方法はpoly(A)鎖を持つmRNAをmAP(Messenger Activated paper,宝酒造製)を用いて行うものである. この結果,単離されたmRNA収量は全RNAの1.5%であり,類似の実験例と比較した場合でも十分遜色ない収量であった. さらにこれより,ラッカーゼIII遺伝子由来のmRNAがこの単離されたmRNA中に存在するかどうか確認するため,in vitro translationを行った. これは単離されたmRNAうウサギ網状赤血球の系(Amersham製)と^<35>Sーメチオニンを用いて翻訳させ,翻訳物の中からラッカーゼIII由来のタンパクをラッカーゼIIIの抗原一抗体反応を用いて精製し,さらにSDS-PAGEより,取り込まれた^<35>Sを標識として検出した. この結果,ラッカーゼIII由来のタンパクバンドが5本検出され,この中でも分子量6万程度に位置する最も高分子フラクションが,ラッカーゼIIIの糖鎖を除去した時の分子量に相当することから,このフラクションがラッカーゼIIIの蛋白をほぼ完全に転写している可能性があり,それ故これに相当する十分なmRNAが単離されていることを示す. このことは,次のステップであるcDNAの合成,クローニングへの展開を十分に保証してくれる重要な結果である.
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