研究概要 |
1.ロイコトリエン生合成酵素の精製と構造解明 アラキドン酸振り分け機構とロイコトリエン(LT)生合成調節機構を解明する上で, 個々の酵素を単離・精製し,その構造や性質を解明する事は必須である. 今年度は, 白血球遊走能等を持つLTB4を合成するLTA4水解酵素をヒト肺より精製し,その詳細な性質を検討した. 分子量は68ー70Kアミノ酸組成,N末アミノ酸配列はヒト白血球のそれと類似していた. また本酵素は基質であるLTA4や類似構造を持つエポキシド化合物により失活をうける事が明らかとなった. ヒト白血球の酵素より決定したアミノ酸を基にオリゴヌクレオチドプローブを作製し, 本酵素cDNAをクローニングし, その一次構造を決定した. 成熟酵素は610のアミノ酸で分子量は69,153と蛋白レベルで決めた値と一致した. N末端よりに強い疎水性部分があり, 活性中心と考えられた. cDNAを大腸菌で発現し, 大量に得た酵素を用いて免疫抗体を作製した. 2.疾患における代謝異常ー脳血管虚血をモデルにー クモ膜下出血後, 遅発性(通常4〜7日後)に脳血管攣縮がおこる事が良く知られているがその成因は不明である. 雑種成犬の大槽内に自家動脈血を注入し, 血管造形にて8日目に脳底動脈が40%程度に収縮している事を確認した. この脳底動脈を摘出し,種々の性質を調べたところ, 5ーリポキシゲナーゼの活性化とロイコトリエンの著明な産生増加を認めた. またヘモグロビン(出血槐)の自動酸化によると思われる脂質過酸化物が5ーリポキシゲナーゼを活性化する事も明かとなった. 現在阻害剤等を用いて, 病態との関連や治療への応用を進めている.
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