研究概要 |
細菌性下痢症の患児から分離した「病原性大腸菌」(EPEC)の培養細胞への付着性についてしらべた. 付着性の定量化をするために新しい方法を考案した. すなわち大腸菌の特性である乳糖分解能を指標にし,その活性をIPTGで誘導すると10^3〜10^4コの菌数をマイクロプレートの中で定量することができる. あらかじめ単層に培養したHEp2,HeLa細胞に,別に培養したE.coliを1〜3時間接触させ,洗浄して未付着菌を除去し,付着菌にIPTGを作用させてβーガラクトシダーゼ活性をタイターテックで定量する. この方法で分離株をスクリーニングすると, 300株中20株に付着性の強い株が分離された. 標準株(血清型作製用)についてしらべると,086型に強い付着性を示すものがあった. 各株のプラスミドパターンを調べたところ,40〜60kbのプラスミドを持つものが多く,086にも同様のプラスミドがあった. この株のプラスミドについて現在解析をすすめている. 細胞付着性因子の解析と併行して,E.coliの細胞毒性・傷善性についてVero細胞により検索した. 分離株のうち18株にVero細胞毒性が検出されるが,いわゆるVeroの毒素ではなく,極めて弱い非特異的な細胞毒性が検出されるものがあった. しかしその再現性に問題があり, 現在その検索をすすめている. これに類似した毒性物質がKlebsiella oxytocaで検出でき,その性状を解析しているが,細菌の増殖期の定持時期に産生される. 小分子の細胞毒性物質があることがほぼ確実になった. この物質の遺伝子皆影をもしらべている. 病原性因子の遺伝子発現は修飾され易いが,付着性因子もその例外ではない. 毒性原性大腸菌のtox遺伝子の発現の調節機構, 抗生物質によるその発現修飾などについて分子遺伝学的手法を導入,開発しながら,その問題解明もすすめている.
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