研究概要 |
日本脳炎で死亡した患者脳より分離されたJaOHO566株と,これを親株とし, 細胞培養継代によって得られたブタ用生ワクチン株MLー17についてそれらの遺伝子のcDNAクローニングと塩基配列の解析を行なった. JaOHO566株は, ウイルス外被膜糖タンパク貭(E)遺伝子部位の塩基配列の解析が, 終了しており, MLー17株については, 全遺伝子の約90%についてのcDNAがクローニングされ, その全てについて塩基配列を決定し, 残りの部分を現在クローニング中である. 現在までの結果より, MLー17cDNAの塩基配列をアミノ酸配列に変換してみると, 先に塩基配列が決定された, 野性株JaOArS9ー82と同様に, 一連の長いOpen reading frameと585塩基の3'ーnoncoding regionが存在していた. Eタンパク質遺伝子領域ではJaOHO566株とMLー17株間で, 986症基対の内5つの点変異が存在し, その内3塩基対はアミノ酸の置換に連なっており, 3つのアミノ酸置換のうち1つは, 疎水性から親水性へのアミノ酸の置換であった. preーM部位に存在するNーglycosylation(AsnーXーThr)部分は保存されていた. また, JaOArS9ー82株と比較して非構造タンパク質であるNSー5とNSー3の部分に変異が集中していることから, この部分に関与しているRNA依存RNAポリメラーゼ活性の変異の可能性が示唆された. 野外蚊から蚊培養細胞で分離されたJaOArBl878株および死亡患者脳材料より分離されたJaNH180株をマウスの脳内又は末梢感染による継代を重ねると,原株に比べてマウスに対する病原性,殊に末梢感染による発症致死率が変化している事が判明した.
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