研究概要 |
本年度はヒトILー2依存性T細胞株(ILTーMat)を用いて, 高親和性ILー2受容体(ILー2)の解析, ILー2による蛋白リン酸化反応さらにILTーMat細胞から得られた変異株(TPAーMat)の増殖シグナル伝達機構の解析を行った. 1.ILー2処理によってリン酸化を受けるpp67とpp63sのリン酸化は高親和性ILー2RあるいはILー2R p75を介していることが分った. 従って, リン酸化反応からみてもシグナル伝達に関わっているのはILー2Rサブユニットの中でもp55ではなく, p75といえる. pp67とpp63sのリン酸化はCキナーゼによるものと推察された. 2.通常のシグナル伝達機能を担う高親和性ILー2Rはp55とp75の複合体であるが, これらp55とp75複合体形成はWGAやp55に対する単クロン抗体で前処理することによって形成阻害される. これらの結果は高親和性ILー2RはILー2結合を介して形成されるという考えを支持する. 3.ILTーMat細胞をILー2の代りにフォルボールエステル(TPA)含培地で培養し, TPA依存性細胞株(TPAーMat)を樹立した. TPAーMat細胞の増殖はILー2によっても促進されるが, TPA依存性増殖時に自分でILー2を産生しながら増殖するという機構は存在しない. TPAーMat細胞の増殖はTPAばかりではなく他のCキナーゼ活性化特質としても知られているフォルボールエステル, 非フォルボールエステルによって例外なく促進され, Cキナーゼ活性化能を有しないフォルボールエステルでは促進されない. 従って, TPA等による細胞内Cキナーゼ活性化がTPAーMMat細胞の増殖シグナル伝達に直関接わっているものと考えられる. TPAーMat細胞はILー2依存性細胞でもあることからILー2Rからの増殖シグナルとTPAによるCキナーゼ活性化を介した増殖シグナルとの異同が注目され, 現在これらの点を中心に解析中である.
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