研究概要 |
昨年度、IL-2依存性細胞株(ILT-Mat)からフォルボーンエステル(TPA or PDBu)依存性増殖細胞株(TPA-Mat)が分離された。本年度はこれらILT-Mat,TPA-Mat細胞の増殖機構を比較検討した。TPA-Mat細胞とILT-Mat細胞は同一細胞クロン由来であり、TPA-Mat細胞はTPA依存性で且つIL-2依存性増殖能をも有していた。TPAによるTPA-Mat細胞の増殖にはIL-2の関与は否定され、TPAが直接細胞内増殖シグナル伝達機構に作用していることが明らかとなった。すなわち、TPAがCキナーゼを活性化させることによって増殖をシグナル伝達が惹起されていると推察された。そこで、TPA-Mat細胞におけるTPA依存性増殖とIL-2依存性増殖機構の異同について検討した。TPA依存性増殖は細胞内cAMPレベルの上昇によって90%以上抑制されているのに対して、IL-2依存性増殖は僅か10%の抑制を受け、両増殖機構に違いがあることが示唆された。以上の結果から、IL-2によるシグナルは高親和性IL-2Rから伝達されるが、その伝達機能はIL-2Rβが担っている。IL-2Rβからの細胞内シグナル伝達系にCキナーゼが関与することを否定できないが、Cキナーゼを介さない伝達系の存在も示唆された。最近ILT-Mat細胞からcAMP依存性増殖変異株(CT-Mat)が得られたことから、IL-2Rβからのシグナル伝達とAキナーゼの関係が注目される。
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