研究概要 |
本研究はガス状大気汚染物質の二酸化窒素(NO_2)およびオゾン(O_3)等の単独あるいは複合暴露による呼吸器系腫瘍のプロモーション作用の有無を検討する. 本年度はラットに発癌物質のNーbis(2ーhydroxypropyl)nitrosoamine(BHPN)を体重Kg当り0.5g投与(1回)し,その後,0,0.04,0.4および4ppm NO.ナ_<2.ニ>を連続18ヵ月間暴露終了後,一夜採尿してから屠殺し,肺と鼻腔の病理標本を作製した. また別に10ppm NO.ナ_<2.ニ>を連続6週間暴露し,腫瘍のプロモーションマーカーとして肺のOrnithine decarboxylase(ODC)活性とポリアミン量の変化を調べた. 肺の肉眼的腫瘍性病変(腫瘍,過形成,増殖を含む)の割合はNO_2暴露群間あるいはBHPH+NO_2暴露群間で全く有意差はなかった. これに対し,病理標本による腫瘍検索ではNO_2単独暴露では腫瘍は全く認められなかったが,BHPN+NO_2群ではNO_2群ではNO_2のOppm群と0.04ppm群で各々40匹中1例の腫瘍があり,0.4ppm群では1例もなかったのに対して,4ppm群では40匹中4例の良性腫瘍と1例の悪性腫瘍が認められた. 鼻腔の腫瘍検索では,NO_2単独暴露群では全く腫瘍はなかった. 一方,BHPN+NO_2群ではNO_2濃度(O,0.04,0.4,4ppm)の違いにかかわりなく,各々97,100,97,100%の腫瘍発生率を示し,また悪性腫瘍発生率も17,38,18および26%となり,NO_2暴露による腫瘍発生を促進するような影響は認められなかった. 腫瘍マーカーとしての尿中ポリアミン量はNO_2の暴露に依存して有意な増加を示した. さらに, 10ppm NO.ナ_<2.ニ>暴露により,肺のポリアミン量は暴露時間の経過に伴ない増加した. ODC活性はNO_2暴露3日目に2〜3倍に増加していた. 以上の結果より,NO_2は非常に弱いながらも肺の腫瘍を促進する,いわゆるプロモーション作用を持つ可能性が示唆された. NO_2+O_3等の複合暴露条件下での同作用につていも現在検討中である.
|