研究概要 |
皮膚リンフォーマの成立因子の解明には, 免疫生物学及び細胞工学的アプローチが必要である. 皮膚リンフォーマ発生については末梢リンパ球中に皮皮膚親和性のある細胞が存在し, それが何らかの機序により悪性化すると想定されている. 悪性リンパ腫細胞のモノクローナルな増殖時点を知ることは確実な診断を下すこと, 治療法を決定すること, 再発を知ることの三つの点で極めて重要である. 我々は皮膚親和性リンパ球のクローン化増殖について, in situ,in vitroで検討した. 1:皮膚リンフォーマ細胞の免疫組織学的同定:ペルオキシダーゼ・抗ペルオキシダーゼ(PAP)法を用いて悪性細胞の浸潤様式と病型について光顕,電顕レベルで解明した. 菌状息肉症, セザリー症候群では浸潤腫瘍細胞はほとんどが核に切れ込みをもつCD4^+T細胞であった. 特異な例としてホジキン病関連抗原Kiー1陽性皮膚リンフォーマが認められた. 従来の報告では小児のみであったが, 我々は成人にも本疾患の発症することを明らかにした. さらに重要なことは異常腫瘍細胞は通常発現されるベきT細胞マーカーを欠損していたり, 発現されるベきでないマーカーを発現していたことで, 本方法による異常な染色パターンは悪性化を示唆している. 2:皮膚リンフォーマ細胞のモノクロナリティーについての細胞工学的アプローチ:皮膚腫瘍及び末梢血リンパ球よりDNAを抽出し, T細胞レセプターcDNAを用いたハイブリダイゼーション法によりモノクローナルな増殖と病型について検討した. 細胞表面形質上, T細胞由来であることが不明なリンフオーマにおいてもT細胞レセプター遺伝子が再構成しており, 本方法の有用なことが判明した. 用いた制限酵素の中ではEcoR1でDNAを消化した場合非特異的に9Kbバンドが出現し, その解釈に注意を要した. 以上の結果より, 皮膚リンフォーマの診断には免疫組織学的方法とDNA解析が有用であると思われた.
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