研究概要 |
前年度我々は, 正常成熟ラットの側脳室内および脳実貭へ,胎生期ラットより得たマイネルト核を移植し, その生着せ証明することができた. しかし脳実貭内への移植は,神経組織を細胞浮遊液の形にした後注入する術式を用いたため,神経組織塊をドナーとして脳実貭に移植することは証明できなかった. そこで今年度は以下の如く実験を行なった. 1.マイネルト核を神経組織塊の形で脳実貭に移植するにあたり,移植生着率を高めるため,宿主動物として以前用いていた生後8週齢の成熟ラットから生後1週齢のラットに変更し,ドナーのラットとして以前の胎生18日目よりも未熟な胎生16日目を用いるなど実験動物に変更を加えた. さらに移植方法も注入法,キャビティ法など二通りの方法で移植手術を行なった. このように移植条件に種々の工夫を加えたが,現在までの所,脳実貭へのマイネルト核の神経組織塊の移植生着は証明できていない. 2.上記実験と平行して,脳移植に及ぼす神経成長因子(NGF)の影響を検討した. これは, 脳移植術と同時に浸透圧ポンプを用いてNGFを持続的に移植部位に注入し, 術後2〜3週間後に脳を検索し, NGFが移植生着率および,移植片と宿主の神経組織にどのように影響を及ぼすかを調べる実験で,まだデータ数が少なく明確な結果は得られていないが,NGFが移植片の神経線維の伸びに促進的な効果を及ぼしていることがうかがえる. 3.上記2つの実験に加えて,前年度に引き続き,24ヶ月齢以上の老料ラットのマイネルト核と対照群(8週齢のラット)を免疫組織学的手法を用いて, 加齢によるマイネルト核の神経細胞の数,大きさ,神経線維の伸び,神経細胞の形態的な変化等を検討した. 今後このデータを増やし, 加令によるマイネルト核の変化を明らかにし, 今後の老齢ラットの移植実験および老齢ラット脳へのNGFの影響を検討する基礎にしたい.
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