研究概要 |
1.黄斑部局所ERGの至適記録条件をヒトとカニクイザルを用いて正常眼,種々の大きさを持つ黄斑コロボーマ,光凝固施行眼等で検討した. 2.赤外線テレビジョン眼底カメラを用い2眼底をモニター下に黄斑部局所ERGを記録しヒトでa波,b波,OFF反応のみならず律動様小波(OP)の記録に成功した. 黄斑部局所ERGのOPは3〜4個の小波より成り各々の小波の頂点間隔時間の平均(±SD)は72名の正常者では6.5±1.2msecであり網膜全面刺激による得られるOPの頂点間隔時間と一致した. OPの〓幅の平均は5°刺激で0.33μV,10°で1.109μV,15°で2.46μVであり著るしいS/N比の改善を要した. 3.黄斑近辺でのERG分布を調べた. 5°中心部ではa波,b波に比しOPが選択的に小さくParafoveaからPerifoveaに進むにつれてOPの分布がA波,b波より相対的に増加する事が判明した. 上方網膜と下方網膜とではa波,b波,OPともに上方網膜の〓幅が下方網膜より大きい. 耳側網膜と鼻側網膜と比較するとa波とb波には差がみられなかったがOPのみに強い有意差がみられた. すなわち耳側網膜ではOPのみが鼻側網膜より有意に〓幅が大きい (P<0.001). これらの所見は網膜生理学的観点から興味深いのみならず黄斑疾患の解析にも重要な所見である事が判明した. 4.種々の黄斑疾患の黄斑部局所ERGのa波,b波,OPを刺激光の大きさを変え検討した. 特に中心性漿液性脈絡網膜症と白内障手術後に生じた襄腫状黄斑浮腫の多数例を比較検討し両者の病態生理の差異が黄斑部局所ERGの諸要素の分析により明確に示される事が証明された. 多くの黄斑疾患に対して黄斑部局所ERGの諸要素を正確に記録し測定すると従来考えられていた症態生理には必ずしも一致しない新しい機能的則面が捉えられる事が判明した. 特にOPは黄斑疾患では異常検出の感度が非常に高く黄斑疾患の解折に重要であると思われた.
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