研究概要 |
本年度は前年度に引き続き、プラーク付着並びにプラークコントロールを行った各インプラントおよび天然歯部の臨床的評価を行うとともに所定の観察期間(植立4、6および12カ月)経過後、1群3頭づつの動物を屠殺し、インプラントを含む顎骨のX線診査を行った後、標本作製後インプラント周囲組織の形態学的な検討を行い、以下の所見を得た。 1.臨床的には、ほぼ前年度から変化は認められず、プラークコントロール側に比較して、プラーク付着側ではインプラント、天然歯部とも評価に用いたPlaque Index,Gingival Indexおよび歯肉溝滲出液量ともプラーク付着開始1カ月後より増加し、4、5カ月後には一定値に達し、Probing Depthも付着開始2カ月後より増加し、6カ月後にはほぼ一定値に達しており、以降いずれの値も観察期間を通じ大きな変化はなかった。 2.X線学的には、プラークコントロール側、付着側ともインプラント周囲骨組織構造に大きな違いは認められず、天然歯周囲と変らぬ骨梁パターンを示す海綿状骨がインプラント周囲に観察された。 3.形態学的には、プラーク付着側のインプラント、天然歯部においては、歯肉溝上皮や接合上皮下に中等度、時には高度の急性あるいは慢性炎症細胞浸潤、上皮内水腫や上皮の網状突出がみられ、しばしば接合上皮の深行増殖なポケット形成を伴っていた。しかしながら、細胞浸潤は歯肉組織に限局し、インプラント・骨界面にはほとんど波及していなかった。一方、プラークコントロール側においては、歯肉縁や内縁側の上皮下に軽度の細胞浸潤が認められるにすぎなかった。 以上の所見より、インプラントの臨床応用に際してのプラークコントロールの重要性が明らかとなるとともに、インプラント周囲歯肉においても天然歯部と同様のプラーク並びに細菌等から由来する起炎物質に対する障壁機能の備わることが推測された。
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