昨年度はRiプラスミドのvir領域の内virCDの構造と機能について明らかにしたが今年度はvirGの全構造及びvirA、virEの一部分の構造を明らかにした。塩基配列からvirGには普通の翻訳開始コドンATG、GTGが存在せず当初真のアミノ末端が不明であったがラクトース遺伝子との融合遺伝子の解析から、virGの翻訳は珍しいTTGコドンで開始されることが示唆された。これを確認するためにAgrobacterium菌内でこの融合蛋白質を量に合成させた後、蛋白質を精製しそのアミノ末端領域14個のアミノ酸配列をエドマン分解法で決定したところ、塩基配列から予想される配列と完全に一致した。TiプラスミドのyirGはATGから翻訳が開始されると云われているがRiプラスミドの翻訳開始部位付近の塩基配列はTiプラスミドでも非常によく保存されているのでRiのみならず「Tiも同じようにTTGから翻訳が開始されていると思われる。これと平行して、野性型のVirG蛋白質の大腸菌内での過剰発現を試みたところ、tacやラムダp_Lのような強いプロモーターをvirGの上流に配置し、かつTTGをATGに変異させると高頻度で発現することを確認した。しかしこのように高頻度で発現したvirG蛋白質は何故か不溶性になってしまい今までのところ、変性させずに精製することができない。しかし界面活性剤を用いる変性条件では非常に多量に蛋白質を精製することが出来るのでこの試料を用いて抗体の作成や基礎的な物理化学的性質を調べる予定である。併せてこの変性条件で精製した蛋白質を再生することが出来るか否かも調べているところである。RiのvirD、E遺伝子間のスペーサー及びvirE遺伝子の構造を調べたところスペーサー領域は病原性に必要でないにもかかわらずTiとRiでよく保存されており逆に病原性に必要なvirEがRiには存在しないことが明らかになった。RiがvirE遺伝子無でなぜ病原性があるのかは不明である。
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