研究概要 |
sD核間の重イオン散乱、^<24>Mg+^<24>Mgや^<28>Si+^<28>Si等での共鳴現象を分子論的模型によって分析することが本研究の目的である。最終年度の主たる目標は、物理量の実験値との比較と模型の自由度の拡張であった。昨年度にはモ-ド・モ-ド結合項を対角化して、基準振動のモ-ドを得た。このK=0の固有状態について幅の分析を進め、共鳴公式を用いて実験の励起関数との比較を行った。その結果、実験でスピンが36と指示されている45.7MeV共鳴については、(2^+,0^+)、(2^+,2^+)チャンネルへの強い崩壊強度を良く再現している。一方、実験では6^+などの高スピン非弾性チャンネルへの強い崩壊も観測されている。当模型の結果に於いてはK=0の6番目の励起状態で(6^+,0^+)(6^+,2^+)チャンネルへ成分が集中し、弾性チャンネル振幅が極わずかになっていることが認められた。従って、この様な励起状態が高スピン励起に寄与していると予想される。しかし核間相互作用の強さについての情報が不十分なため、レベルエネルギ-に大きく左右される幅の分析では、最終的な結論を出すには至っていない。 後半期には、これらの問題の解決のため、相互作用のより精密な検討を行った。近接複合核間相互作用として知られるプロキシミティ力を極-極配位で求めて、これをフォ-ルディング模型に複写して適用を試みた。その結果では、核間相対運動の励起エネルギ-に関しては、用いたポテンシャル依存度が強い。しかし、この模型の特徴である“極-極配位よりずれる運動"の励起エネルギ-は約8MeVとなり、10%の範囲内で一致した。このモ-ドの出現に一般性のあることを明らかにした。模型の自由度の拡張については、今期中に進展をみなかった。しかし現段階の結果は、この模型の範囲内でも、高スピン励起についてさえも強く期待の持てるものである。従って、まず測定可能な物理量を予測・検討し、この様な分子的構造を確立することが重要な課題となっている。
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