弱く結合した複合粒子を入射又は放出粒子とする組替反応を、従来我々が弾性・非弾性散乱にたいして発展させて来たCDCC法(離散化連続チャネル結合法)によって理論的に解析する方法を確立するのが本研究の目標である。本年度はCDCC法自体のスピン偏柱量を含む計算への拡張、この方法の理論的基礎の堀り下げとそれを裏付ける数値計算等を行って成果を上げた。この基礎付けによって、CDCC計算が離散化の方法に依らないこと、有限の距離Rmで漸近的境界条件を課することの妥当性、Rmに対する結果の収束性が検証された。また、組み替えチャネルとの収束性の関連、核一入射粒子間ポテンシャルが吸収的虚数部をもつことの重要性が明らかになった。現在、この続きとして、複合粒子内部の軌道角運動量の上限lmに対する結果の収束性等を追及している。 これと平行して、組み替えチャネルを含むチャネル結合計算の準備を進めた。逐次近似とパデ近似の組み合わせを用いるのが良いことが判った。この方法は放出粒子の運動エネルギーが小さいチャネルに対して収束が悪いことが判明したが、エネルギーに関する内・外捶法で対処することを検討中である。これと平行して組み替え過程の形状因子を一般の角運動量(スピンを含む)状態間に対して有限レンジで計算する方法を開発している。 一方、組替チャネル結合変分法による計算を三、四核子系の基底状態に対して行い、従来のFaddeev法での最良の結果を再現した。しかも、計算に入れるチャネル数に対する収束性がF法よりはるかに速いという注目すべき結果を得た。これはF法を絶対視する従来の見方にも修正を迫ると共に、この方法の散乱状態への応用に期待を抱かせるものである。変分法は又(dtμ)系にも応用され、μ-オン觸媒融合反応の反応率、μ-オンのαへの附着率が計算された。最終的ではないが新しい道が拓けた。
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