入射イオン型移動管質量分析計は、移動管部に約0.5tvrrのヘリウムガスを充し、そこへ質量を同定したイオンを外部から入射させ移動管内部の電場強度を変えることによりイオンの運動エネルギーをコントロールするものである。移動管部を冷却することにより、測定下限エネルギーを移動管温度まで下げることが出来る。62年度に極低温におけるイオン・分子反応の研究を目的として、移動管を液体ヘリウムで冷却したことろ入射イオンX^+を核とするヘリウムクラスター(XHe_n)^+が検出された。ヘリウムクラスターイオンの生成は、本研究により世界で初めて成功したものであり、急拠目的を変更してヘリウムクラスターイオンの生成とその安定性について研究を行うことにした。 移動管内で生成されたクラスターイオンが検出部の残溜気体と衝突してこわれている可能性があるので、62年度補助金によりターボ分子ポンプを購入、63年度補助金により真空配管の改良、バルブの設置を行い差動排気が行えるようにした。 入射イオンX^+としてHe^+、Ne^+、Ar^+、Kr^+を用い、各々のイオンを核とするクラスターを生成し、移動管内のイオンの実効温度を変えながらサイズ分布を測定した。サイズnの出現温度からクラスターの結合エネルギーに関する情報が得られた。He^+が核の場合n=1、2、9、13が魔法数であることが判明した。一方Ne^+の場合にはn=1、2、11、13が魔法数であり、Ar^+、Kr^+が核の場合にはn=1、2、12が魔法数であることがわかった。核となるイオン種によって安定なクラスターのサイズは異なっている。その理由は分子イオン(XHe)^+の安定性がイオン種により異るためではないかと考えられる。今後さらに各種イオンを入射させその安定性を調べて原因を究明する予定である。
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