研究概要 |
中新世前・中期の軟体動物化石の地理的分布について. 1.瑞浪層群明世累層中部に見られる, 寒流系のFelaniella群集は, 瀬戸内中新統の各層に含まれる. すなわち, 京都府の綴喜層群, 滋賀県の鮎何層群, 三重県の阿波層群・一志層群, 岐阜県の岩村層群, 長野県の富草層群である. この群集が太平洋側で東へどこまで分布するか, 今後の研究課題である. 2.群集は下位の明世ファウナと上位の黒瀬谷ファウナ・門ノ沢ファウナに区分される. 明世ファウナは日本海側には相当するものがない(この層準の海成層がない)が, 太平洋側では, 静岡県の倉真層群, 常磐地方の湯長谷層群に見られる. ただ, 湯長谷層群については, 珪藻による生層序では時代的なくいちがいがみられ, 今後の検討を必要とする. 3.中期中新世の熱帯系種の分布が日本海側で確かめられていて, 山形県まで分布するとされる. 太平洋側では, 中部日本まで分布が見られ, この差が何によるのか, 日本海の形成・日本列島の移動がこの時期に起ったといわれることと関連して, さらに検討を予定している. 鮮新-更新世の軟体動物化石の時代的・地理的分布について. 掛川地方(静岡県)の掛川層群上部曾我累層・小笠層群について, 地理的時代的変化を検討した. 古環境の変化と対応して群集が変化し, 水平的には西より東へ深くなる傾向, 垂直的には下から上へ, 新しくなるにつれ浅くなる傾向が認められた. とくに, 小笠層群の形成時代には, 河口におけるデルタ的杵相が形成されたことが明らかになった. そこでは, 内湾汽水生の群集が見られ, かつ, その中に南方系の種類が認められるので, 氷河性海面変動に伴う, 群集変化も推定された.
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