イスラム都市史をカイロ市の歴史的市街地を対象としてとらえた。カイロについては絵地図から都市計画図まで、多くの資料がある。街路網の変化はその代表的な資料を現代の街路網図に整合させることによって、既に明らかにしてきた。これ等の作業から、500年以上にわたって様々な変化があったことが判明すると同時に、長期間にわたり街路としての機能を維持し続けてきた箇所もあることが明らかとなった。歴史的な建造物、特にイスラム社会に於てその中心的な存在であるモスクは記念建造物としても代表的なものであり、これ迄にもその詳細についての研究がなされてきたが、これを景観という視点からみたものは少ない。 モスクに限らず、指導的地位にあった人々の邸宅もカイロ市を物理的に構成する要素として重要である。またスーク、フンドゥクといった商業施設も歴史的なものがかなり残っている。こうした公共的建築物に関する資料の収集が基本的な成果としてあげられる。さらに景観上、公共施設の立地を研究するとすれば、現地で撮影してきた写真、スライド等は欠くことの出来ない資料である。しかしこれ等は数が多くなると、街路網との対応関係を厳密にした上での検索作業が行なわれ難い。 街路網そのものが、紙上の地図としてではなく座標値としてコンピュータにデータストックされていることから、これ等、写真、スライド等の映像情報をその立地点との関係から検索可能なようにデータストックする方法を検討した。 現在のところ、使用した機器の性能からくる限界の為に、システムとしては完成したが、多量の情報をストックして実用化するには至っていない。しかし立地動向の動的な要件についての基本的な検索条件を整理することが出来た。
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