当該科学研究費補助金の交付を受けて本年度に行った研究実績の概要は以下のようである。 1.急冷凝固法による合金試料の作製 昭和62年度に溶製したAl-Hf、Al-SiおよびAl-Li母合金に加え、Al-10%Cr母合金を溶製した。これらの母合金と純アルミニウムおよびシリコンをAl-2.5%LiおよびAl-2.5%Li-3%Cr-0.3%SiおよびAl-2.5%Li-3%Cr-2%Hf-0.3%Si合金となるように配合し、それら約10gを赤外線加熱炉内のアルゴン雰囲気中で溶解し、2.4mm間隙をもつ水冷銅鋳型へ急冷凝固した。この時の凝固速度は約3000K/Sと算出された。 2.時効処理および時効した試料の機械的性質 急冷凝固試料を小片に分割し、アルゴンガス封入したのち、まず773Kの高温で、ついで523Kの低温でそれぞれ種々の時間1時効した。その結果、Al-Li2元合金にHf、SiおよびCrを複合添加することで、著しい時効硬化性の改善のみられることがわかった。 3.組識観察 各時効試料を電子顕微鏡により組識観察した。その結果、Al-Ti-LiおよびAl-Zr-Li系合金と同様、Al-Hf-Li系合金においても複合析出が見出された。殊に、今回新たに添加したクロムは時効の極く初期に粒界析出して、粒界反応型析出を抑制し、その結果として粒内の微細球状の連続析出領域が増加することが、機械的性質の改善に大きく貢献すると結論された。
|