研究概要 |
BCl_3存在下, 高ヘテロタクトなメタクリル酸メチルースチレン交互共重合体(高H体)を生成する機構を明らかにするため, BCl_3濃度を広範囲にわたり変化させてメタクリル酸メチル(MMA)とスチレンの共重合を, -60°Cで行った. BCl_3のMMAに対するモル比が1.8〜5.0で, f_<HM>(MMA中心トリアドにおけるコヘテロタクト分率)が約70モル%に達する高H体を得ることに成功した. 1.0以下では, f_<HM>43モル%の全くコタチシチーの異なる交互体であり, さらに-75°Cに温度を下げて重合を行うと, より低濃度の1.4でf_<HM>が約75モル%の高H体が得られてくる. 低濃度系では, 従来の金属塩を用いた系と同様の挙動を示し, MMA-BCl_3-スチレンによりなる三成分三分子錯体の重合で交互規制される系と解析できる. モル比2.0以上で高ヘテロタクト分率に変化がないことおよび, より低温にすると高H体を与えるBCl_3濃度が低下する(1.8→1.4)ことより, もう一分子のBCl_3がモノマー錯体の生成に関与して, 高ヘテロタクト規制を行っていると推定できる. すなわちMMA-BCl_3-スチレンーBCl_3の三成分四分子錯体が, モノマー錯体と考えられる. 上記の重合は光照射下で行ったが, 過酸化ベンゾイルを開始剤として用いた暗所での重合でも, 同様のBCl_3濃度依存性がみられ, 光照射は, 立体規制に影響していないことを明らかにした. 高H体の二次元NMR測定では, コンベンショナルなMMA-スチレン共重合体に比べて, 良く分離したスペクトルが得られる. J分解2Dスペクトルでは, メチレンプロトン領域にテトラドによる分裂が観測され, 高H体なので, rmr, mrmに由来するピークが同定された. フェニル領域の解析からオルト, メタ, パラの帰属が直接出来た. ^1H-^<13>Cシフト相関2Dからは, これまで不明であったスチレンのメチンプロトンが低磁場よりI, H, Sであることが明らかに出来た.
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