本年度は昨年度の測定結果を検討し、以下に示す様な熱量計及び周辺装置の改良を行うことにより、測定精度の向上を図った。また二酸化炭素、窒素、及びこれらの混合物のエンタルピー測定を行った。 1.等温流通式熱量計の改良 等温法では高圧ガスを加熱しながら等温膨張させるため、膨張管付近で温度分布が生じ易くなる。そこで膨張管付近から熱量計外への熱漏れを回避するために次の2項目の改良を行った。 (1)入口管を長く(1m)とり熱量計内で数回巻くことにより、入口管を通しての熱移動がないようにした。 (2)膨張管の充填物の粒径を変えることにより流量と加熱量が適当な範囲内に収まるようにした。 2.測定装置の検討 昨年度の誤差解析により圧力測定及び流量測定の誤差による測定値への影響が大きいことが判明した。そこで本年度は測定精度向上のため次の2項目の改良を行った。 (1)昨年度までのブルドン管式圧力計の代わりに死荷重圧力計を使用することにより測定誤差を±4kPaに減少させた。 (2)内容積が既知のセルを使用して流量計の検定を行うことにより流量の測定精度を向上させた。 3.窒素、二酸化炭素及びこれらの混合物のエンタルピーの測定 二酸化炭素については温度298.15K及び313.15K、圧力3.0MPaまでにおいて測定を行い、本実験値をIUPACの状態方程式による推算値と比較したところ、平均偏差は昨年度の12.4J/molに対し本年度は6.3J/molとなった。また本実験値の平滑線からの偏差は昨年度の6.01J/molに対し本年度は2.51J/molと良好な結果が得られ、誤差解析から求めた装置固有の誤差は昨年度の半分程度となった。窒素および混合物についても同様に昨年度と比較して測定精度が向上した。以上の様に熱量計の改良及び測定装置の検討を行った結果、二酸化炭素などのスロットリング係数の大きな物質に関しても高精度の測定が可能となった。
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