研究概要 |
研究初年度の本年は, 集積培養によってセルロース分解微生物を分離するための前段階として, 種々の条件下でこの微生物群の変動をとらえることを研究の主要な目的とした. すなわち, 土壌懸濁液振とう培養系を用いて, セルロース分解微生物の集積状況を検討した. その際, セルロース分解微生物の集積にともなって集積・変動するであろう関体微生物群の追跡も行った. また, セルロース分解微生物を含めて種々の微生物群の集積状況を把握する上で必要な微生物数計測の基礎的な問題についても検討した. さらにセルロース分解を左右するであろう一つの因子となる栄養条件について予備的な知見を得るために, 既知の菌株を用いたセルロース分解試験をも試みた. 土壌懸濁液は, 300mlの無機塩混液(g/l;NH_4NO_3,1.42;KH_2PO_4,1.0;MgSo_4・7H_2O,0.5;Kcl,0.5;Fe_2(SO_4)_3・7H_2O,微量;酵母エキス,0.05)に6.0gの風乾篩別土壌を添加して調整した. そして, 粉末セルロースをそれぞれ0.5g, および5.0g添加したものと, 無添加の対照区とをもうけた. セルロース分解微生物数の計測は, 濾紙片分解を目安とした5段階希釈5連の最確値法によった. また, その他の微生物数は, 種々の培地を用いた希釈塞天平板法によって計測した. 得られた主な結果は以下の通りであった. 1.土壌懸濁液振とう培養系では, 時間経過にしたがってpHが低下した. 2.このpH変化は, 懸濁液にCaCO_3を含め添加することによって緩和される傾向にあった. 3.pHの変化は, セルロース分解微生物の集積や, その他の微生物群の変動に大きく影響するようであった. 4.またpH変化の程度は, 懸濁液に添加した粉末セルロース量に依存した. 5.既知菌株のセルロース分解能は窒素源によって影響を受けたが, それは菌株によってもことなった.
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