本研究により以下の成果を得た。 1.リシンA鎖及びB鎖の脂質二重膜への結合に対する脂質組成の影響 単離したA鎖、B鎖は荷電及び非荷電脂質、卵レシチン、赤血球膜脂質からなるリポソームに対し、いずれにも塩の存否にかかわらず結合することから、A鎖、B鎖の膜との結合には疎水結合が関与することがわかった。また、コレステロール含量が10%以上になると結合は著しく減少した。 2.リポソーム不活化蛋白質(RIP)/リジンB鎖hybrid分子の細胞毒性 表面疎水領域をもたないRIP(luffinとPAP)とリシンB鎖をSPDPにより架橋し、そのHeLa細胞に対する毒性を調べた結果、いずれも毒性が発現されないことから、リシン分子の膜通過にはA鎖分子の表面疎水領域を含む構造が重要であることが示唆された。 3.リシン及びそのサブユニットの分子表面疎水度 シスーパリナリン酸を用いた蛍光法及びトリトンXー100との結合によって調べた結果、A鎖はB鎖より約4倍大きい表面疎水領域を有し、これらの領域はリシン分子内に隠れて存在することがわかった。 4.リシンA鎖及びB鎖のDPPCーリポソーム結合/侵入部位 トリプシンで処理したA鎖リポソーム複合体から、Ileー1、Pheー57、Gluー135及びPheー181から始まるペプチドが得られたが、トリプシン分解ペプチドPheー57〜Argー85及びGluー135〜Argー166はリポソームに結合することから、A鎖のDPPCーリポソーム結合侵入部位はGlyー35〜Asnー47領域を含むCー末端領域であると推定された。一方、サブチリシンで処理したB鎖リポソーム複合体から主なペプチドはAlaー1〜Asnー46であることから、B鎖のDPPCーリポソーム結合/侵入部位はB鎖のNー末端領域であると結論した。
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