研究概要 |
1.大井川…大井川流域の巨視的な土砂移動の特性を把握するため, 貯水池堆砂資料を使った解析を行った. 一方, 詳細な渓流の動態把握のため, 東河内実験渓流の渓床変動を計測するとともにその解析を行った. (1)大井川流域の年比流砂量は2千〜6千(m^3/km^2/yr)となり, 全国平均より1オーダ大きい値を示した. (2)ダム上流に移動可能な土砂が十分に存在する場合は, 雨量(流量)と流出土砂量とにある程度の対応があるが, 存在しない場には対応がない. すなわち, 降雨(流量)条件だけでは流出土砂量は決まらない. (3)実験渓流では, 総雨量が200mm, 時間雨量が30mmを越すと渓床変動が発生する. また, 流量と渓床変動量との関係は, 従来言われている"流量が大きければ渓床変動量も大きい"という単純なものではない. (4)実験渓流の渓床変動の解析から, 洗掘過程では単位流量当りの渓床変動量が指数関数的に減少していくという規則性が明きらかになった. (5)1982年8月豪雨(台風10号)による土砂生産量把握のためステレオメトログラフを使って崩壊発生前後の空中写真を計測した. この結果, 実験渓流上流の崩壊発生面積は約17万m^2となり, 平均の深さを数mとすれば, 約50万m^3の土砂が生産されたことになる. 実測から, このうち約20万m^3の土砂が実験渓流観測区間に一時的に堆積したことが明らかになった. 2.沙流川…既存のデータ収集につとめる一方, 本流上流部およびチロロ川, パンケヌシ川, ウェンザル川の各支流について樹木年代学的手法によって土砂移動調査を行った. 現在その結果を解析中であるが, 過去に堆積した渓間堆積物が現在的な降雨(流量)によって雨移動していることは, 間違いないようである. ここに大井川と異なる沙流川の特徴がある.
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