研究概要 |
目的:本研究は, 木本植物の健全組織および障害組織の生産するフェノール成分を検討し, Agrobacterium tumotecienceのTi-プラスミド中のvir領域活性化物質を明らかにするとともに腫瘍形成の機構を解明しようとするものである. 結果と考察:1), シラカンバ, ポプラの健全木の生活組織中のフェノール成分をカラムクロマトグラフィー, HPLCなどで検討し, シラカンバからベチュロシド, プラティフィロシド, サリドロシド, アピオシルロードデンドリンなどを, ポプラからサリシン, グランドデントシド, ポプリンなど多数のフェノール配糖体を単離同定した. 2), シラカンバやポプラの障害組織中に生成するフェノール成分を検討するために芽生えから培養組織を誘導した. BAおよびNAAを0〜1.0ppmずつバランスよく含んでいる培地上で特に茎からカルスが良好に誘導された. 3), カルスから一部をとり振とう培養し, 生成した化学成分のGLC, HOLCによる分析条件を検討した. 4), 低分子フェノール成分を用いvir領域活性化能の検定条件の検討を行った. その結果, フラボン, クマリン, リグチン, スチルベンの仲間に活性化因子として働く化合物が存在することが判明した. 5), 上記のフェノール成分は程度の差はあれある程度の濃度までvir領域を活性化したが, 高濃度になるとvir領域の活性化を阻害した. 6), 一方, タバコカルスにあって vir領域活性化物質の一つとわかっているアセトシリンゴンは, 濃度の上昇に伴いvir領域を活性化することが判明した. 7), シラカンバカルスやポプラカルス中に生成されたvir領域活性化物質については63年度に継続検討予定である.
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