研究概要 |
温熱負荷時の胸管リンパの温度依存性の原因を明らかにするため, 胸管へ流入する所属リンパ流量を左右する重要な因子である所属血流の変動の定量化を行った. 温熱負荷時のラット後肢血流(腎動脈分枝後の腹大動脈), 内蔵血流(腸間膜動脈血流, 腎血流)をパルスドップラー血流計を用い, 意識下で測定した. その結果:1.温熱負荷前の後肢血流, 腸間膜血流, 腎血流は, それぞれ, 7.56±1.57ml/min・100gb.w.,4.55±1.21ml/min・100gb.w.,1.02±0.30ml/min・100gb.w.であった. 2°C結腸温を上昇させる温熱負荷によって, それぞれの血流は, 10.13±2.18ml/min・100gb.w.,3.02±1.42ml/min・100gb.w.,0.83±0.22ml/min・100gb.w.となった. 結腸温を2°C上昇させる温熱負荷によって, 後肢血流は33%増加し, 腸間膜動脈血流・腎血流は, それぞれ, 34%, 19%減少した. 2.次に, 血流変化と胸管リンパの変動との関係を明らかにするため, 今, 所属血流の増減がそのまま所属リンパの生成に寄与すると仮定し, 内蔵系のリンパの90%, 後肢のリンパの10%が胸管に流入するとして, 温熱負荷時の胸管リンパの変動を計算すると, 2°C結腸温を上昇させる温熱負荷によって, 胸管リンパは22%減少することが予想された. 3.一方, 結腸温を2°C上昇させた時に, 実測した胸管リンパの減少度は30%であり, 温熱負荷による血流分布の変動が胸管リンパの変動に与える影響が大きいことが示唆された. また, 温熱負荷時の交感神経活動を内臓交感神経の節前線維で測定した結果, 温熱負荷により節前線維活動が大きくなることが示された. 次年度は, 中枢加温による胸管リンパ・血流の変化を検討すべく, 購入した加温器(リージョンジェネレーターを低電流領域で使用)の至適電流設定を検討している.
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