意識下のラットの結腸温を1℃、2℃、3℃上げる温熱負荷を行うと、温熱負荷開始後1〜2時間で胸管リンパ流量は、1℃、2℃、3℃を結腸温の上昇に対して、それぞれ8%、23%、25%減少した。次の1時間(温熱負荷開始後2時間目から3時間目)では、18%、30%、45%減少した。温熱負荷終了後も少なくとも2時間は減少した状態が続き、その後、漸次回復した。この温熱負荷時の胸管リンパの温度依存性の原因を明らかにするために、胸管に流入する所属リンパ流量を左右する重要因子である所属血流の変動の定量化を行った。温熱負荷時のラット後肢血流(腎動脈分枝後の腹大動脈)、内臓血流(腸間膜動脈、腎動脈)をパルスドップラー血流計を用い、意識下で測定した。その結果:1.温熱負荷前の後肢血流、腸間膜血流、腎血流は、それぞれ、7.56±1.57ml/mim・100g body wt、4.55±1.21ml/min.100g body wt、1.02±0.30ml/min.100g body wtであった。2℃結腸温を上昇させる温熱負荷によって、それぞれの血流は、10.13±2.18ml/min.100g body wt、3.02±1.42ml/min.100g body wt、0.83±0.22ml/min.100g body wtとなった。結腸温を2℃上昇させる温熱負荷によって、後肢血流は33%増加し、腸間膜動脈血流、腎血流は、それぞれ、34%、19%減少した。2.次に、血流変化と胸管リンパの変動との関係を明らかにするため、今、所属血流の増減がそのまま所属リンパの生成に寄与すると仮定し、内臓系リンパの90%、後肢リンパの10%が胸管に流入するとして、温熱負荷時の胸管リンパの変動を計算すると、2℃結腸温を上昇させる温熱負荷によって、胸管リンパは21%減少することが予想された。3.一方、結腸温を2℃上昇させた時に、実測した胸管リンパの減少度は30%であり、温熱負荷による血流分布の変動が胸管リンパに与える影響が大きいことが示唆された。
|