研究概要 |
本研究は, 2年間を目標に, (1)無菌ラットを用いた実験動物モデルの確立と, その免疫病理学的検索ならびに, (2)ヒトカンピロバクター感染症患者の胃腸粘膜の免疫組織化学的解析から, その感染ならびに消化器病変の成立における局所免疫機構の役割を明らかにすることを目的に開始された. ヒト慢性胃炎患者胃粘膜生検組織における菌体の局在を観察したところ, 主として腸上皮化生を伴わない腺管内に菌体を検出した. その腺上皮は通常過形成となり, その周囲の固有層にはJgA形質細胞およびbelperT細胞の増多が著しく, 菌体に対する生体の免疫応答と上皮細胞の増殖性変化を誘導することが明らかとなった. また, Cpyloridis未感染の無菌ラットおよび通常環境下で飼育されたラットの消化管およびリンパ装置の免疫組織化学的検索はほぼ修了し腸内細菌叢に対する生体の免疫応答機構の一端が明らかとなった. 無菌ラットでは消化管リンパ装置の発育は悪く, 殊にパイエル板では胚中心の形成はほとんど認められず, また腸管繊毛上皮細胞間リンパ球(IEL)は通常環境下で飼育されたラットの1/10以下で, 上皮細胞におけるIa抗原の表出はほとんど観察されなかった. 固有層のIgA形質細胞もごく少数で, これらを欠く繊毛も認められた. しかし腸内細菌叢の定着によりIELの増多と固有層のIgA形質細胞の著増, 上皮細胞のJa抗原の出現が証明された. 本年度の当初の研究計画からは, ヒト慢性胃炎患者胃粘膜組織からのCpyloridisの分離および本学部実験動物研究施設内の感染実験室の整備が予定より遅れたが, 昭和63年度でもヒト材料より分離された菌を, 無胸腺ラットならびに無菌環境下で飼育された免疫学的に正常な8週令のラットに経口的に感作させる実験をひき続き継続する.
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