研究概要 |
37°C以外の培養温度での細胞放射線生物学についてヒト肺癌由来AOI細胞を用いて検討を始めた. まず, 34.0°〜41.0°CCでの増殖曲線を調べ, 40.0°C以上では増殖の抑制が著しく数回以上分裂しないことが判明した. この細胞では37.0°Cよりも低温の方が増殖が速く, 34.0°Cが至適条件であり, 31.0°C〜33°Cの温度域での増殖も検討中である. またBrdU及び抗BrdUモノクローナル抗体を用いて細胞動態の解析をFCMを用いて行っている. 形態上も培養温度の影響は明らかで, 低温では胞体が小さく, 接触阻止の傾向が小さくなり, 飽和密度でも約1.5倍低温の方が高かった. 現在, 位相差顕微鏡を用いて, 培養開始後何日目で培養温度の影響が出るかを検討している. 放射線感受性の検討を増殖期の細胞を用いて行ったが, 生存曲線上での培養温度の影響は有意でなかった. 分割照射実験を8Gyを二分割する方法で行ったが, 37.0°C以上と37.0°C未満の温度域では, 生存率の上昇速度が異なり, また, その後の生存率の下降に続く上昇の速度も違うことが判明した. 現在, 全国でHyperfractionationが臨床治療に用いられつつあるが, 体温・腫瘍温度の違いを, 一日多分割照射間隔に反映させるべきかどうか重要な問題と考えられる. 従って, 今後, 更に詳細に検討してゆきたい. いわゆるプラトー期の細胞を用いたPLD回復については, 現在, 実験を繰り返している. 現在, ヒト悪性黒色腫由来M-II細胞も用いて増殖曲線を検討中だが, 37.0°Cが増殖至適温度でないことや, 37.0°C以外の培養温度で形態学的に違いが生ずることが示唆されている. 既にヌードマウスへの移植実験を開始すべく, 各種ヌードマウスを用いて37.0°Cで培養したAOI細胞の移植率を検討した. その結果KSNヌードマウスへは93%の移植率だったが, BALB/Cヌードでは50%以下であった.
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