多臓器障害の発生機序ー動物モデルによる解析

1988 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 62570568
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 上林 純一 大阪大学, 医学部, 助手 (40135687)
• 研究分担者: 辻仲 利政 大阪大学, 医学部, 助手 (40188545) ; 左近 賢人 大阪大学, 医学部, 助手 (40170659)
• キーワード: 多臓器障害 / エンドトキシン / 動物モデル / DIC / 感染症

研究概要

前々年度私達は汎発性血管内凝固症候群(DIC)と多臓器障害(MOF)を合併発症する動物モデルを開発し、前年度はこのモデルに抗凝固剤であるヘパリンを投与し、血小板数の減少が抑制されると同時に臓器障害発症が抑制されることを確認した。今年度はヘパリンの持つ抗凝固作用がこのモデルでの臓器障害抑制に必須のものであるかを確認するために、ヘパリンの作用機序を解明しようと試みた。ヘパリンには抗凝固活性(特に抗トロンビン活性と抗Xa活性)を持つと同時に酸性多糖類としての多くの作用を持ちと考えられている。そこで、(1)ヘパリンの持つ抗トロンビン活性を持つMD805(選択的合成トロンビン阻害剤)、(2)ヘパリンの持つ同じ抗Xa活性を持ちながら、抗トロンビン活性の低い分子量ヘパリン(LMWH)、(3)ヘパリンと同重量のヘパリンノイドで、抗凝固活性の低いデキストランサルフェートをそれぞれ投与し、前述のヘパリンでの効果と比較し検討した。その結果、LMWH投与はヘパリン投与とほぼ同じ効果を認めるのに対して、MD805投与、デキストランサルフェート投与では効果が認められなかった。このことより、重症感染症におけるヘパリンの臓器障害抑制のメカニズム発現には抗凝固活性が必須であることが確認された。さらに抗凝固活性の内でも、特にXaを抑制することが効果的であることが示唆された。重症感染症時MOF発症には凝固亢進状態の関与が深く示唆されると同時に、臨床面においても、凝固亢進状態を改善することにより、MOF発症を防止しうることが可能になることが示唆されました。

研究成果

• [文献書誌] Kambayashi.J.: Korean J.Hematol. 23. 536 (1988)
• [文献書誌] Kambayashi.J,;Mori.T.: Brit.J.Surg. 75. 886-887 (1988)
• [文献書誌] 上林純一,森武貞: 救急医学. 12. 29-35 (1988)
• [文献書誌] 上林純一,森武貞: 外科. 50. 674-679 (1988)
• [文献書誌] 上林純一: 消化器外科. 11. 1864 (1988)
• [文献書誌] Tanaka,T.: THROMBOSIS RESEARCH. (1989)
• [文献書誌] Kambayashi,J.: "Methods in enzymology." Academic Press, 442-454 (1988)
• [文献書誌] 上林純一: "プロスタグランジン講座 第2巻 心・血管と血小板" 化学同人, 115-124 (1989)