研究概要 |
マウス乳がん由来FM3A細胞に制がん剤である5-フルオロデオキシウリジンを作用させるとDNAの前駆体であるデオキシリボヌクレオシドミリン酸(αNTP)プールの不均衡が生じ, 次いでDNA二本鎖切断がおき, 細胞は死に到った. 我々はαNTプールが不均衡になるとDNA二本鎖切断が誘発され細胞が死に到るのではないかと考え"αNTP Imbalance cleath"と云う仮説を提唱した. そこで我々は, 哺乳動物細胞にαNTPプールの不均衡を引き起こす薬物の検索をしたところ, デオキシアデノシン, 2-クロロデオキシアデリシン, 5-フルオロウラシル, 5-トリフルオロデオキシウリジン及びトロポロン誘導体にその作用がある事が判った. これら化合物が引き起こすαNTPプールの不均衡のパターンは, 同一ではないが, 四種類のαNTPの内少なくても一種類のαNTPが枯渇する点で共通している. また, αNTPプールの不均衡は例外なくDNA二本鎖切断を誘発した. 以上のことより, 我々は"αNTP Imbalance death"の仮説を一般則とできる根拠の一つをえたと考えた. 次にDNA二本鎖切断の性質を調べる目的でパルスフィールドゲル電気泳動のOFAGE法を用い研究を行った. その結果DNA二本鎖切断片は100〜200Kbpの長さを有する事が判り, 一定の部位でDNA二本鎖切断が起きていることが示唆された. またこのDNA鎖切断と細胞死はパラレルであることが判った. 我々は以前にDNA二本鎖切断をする酵素がαNTPプール不均衡時に誘導されることを見い出している. 今回, このOFAGE法を用いることによりより簡便にこの酵素活性の検出を行うことができる様になった. 現在, この酵素の精製を行っている.
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