研究概要 |
1.種々のヌクレオシド類(5ーフルオロデオキシウリジン(FdUR),デオキシアデノシン,zークロロデオキシアデノシン,トリフルオロメチルデオキシウリジン等)を細胞に投与して細胞内デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP;dATP,dGTP,dCTP及びdTTP)プールの不均衡を誘導すると、この不均衡に起因すると考えられる細胞死(dNTP imbalance death)が起こった。それぞれの化合物で生じたdNTPプールの不均衡パターンは異なっていたにもかかわらず、生じたDNA断片をorthogonal-field alternation gel electrophoresis(OFAGE)で調べると100ー200Kbpと同じ大きさであった。このことは、このDNA二本鎖切断が細胞死の直接の原因であることを示唆している。 2.マウスFM3A細胞にFdURを投与し、20時間後の細胞を集めて超音波で破壊した後10万gで遠心した上清をlysateとした。これをDEAE-agaroseカラムクロマトグラフィーで分画したところ5mM Naclの塩濃度で溶出される画分にintactなFM3A細胞のDNAを切断するヌクレアーゼ活性が検出できた。 3.2.と同様にlysateを分画するとNaclを含まない画分に2.のヌクレアーゼ活性を阻害するfactorがあることがわかった。 4.FM3A細胞にFdVRを投与した後、OFAGEでDNAを分離し、100ー200KbpのDNA断片の部位を切りとり、ゲルごと5末端を^<32>Pでラベルした後DNAを抽出して5末端の塩基配列を解析したところ、ピリミジン塩基であることがわかった。このことはDNAが特異的な部位で切断されていることを示している。 以上述べた研究結果によってdNTP imbalance deathが起こる時には特異的な部位でDNA二本鎖切断を起こすヌクレアーゼが誘導され、細胞に致死的に働いていること、及び、その阻害物質が細胞内に共存してヌクレアーゼとの相互作用によってDNA二本鎖切断、ひいては細胞の生死をも制御していることが示唆された。
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