研究課題
一般研究(C)
白血球は細胞膜にNADPHを基質としてスーパーオキサイド(O_2^-)を生成する一種の電子伝達系が存在する。この膜内電子伝達因子には諸説がある。この点を明らかにするために、無損傷の活性中心(フラビン及びヘム蛋白)をもつ標品を分離し、電子伝達反応のKinetics及び物理化学的性質を明らかにする必要がある。この状件を満す標品を、粒状ゲルを用いた。調製用平板等電点電気泳動法に改良を加えて分離した。(1)フラビン酵素(pl5)の分離と電子伝達反応:NADPHの電子受容体と考えられるフラビン酵素がpl5.0に集まり、分子量が約70KDaであることを確認した。このフラビン酵素は、チトクロムCに直接電子を渡し酵素との反応性は低く、チトクロムCペルオキシダーゼ(CCP)とH_2O_2との複合体生成反応で測定したKmO_2は、70〜134MMとなり、膜レベルのNADPH(O_2^-生成)酵素のKmO_2の6〜7MMの10倍高い値を示した。従って、膜内ではフラビン酵素は、酸素とは直接反応しないと考えられる。(2)チトクロムb558の分離及びESRスペクトル:等電点電気泳動のアンホラインの状件を変えることにより、チトクロムb558のヘム部位の変性なしに、分離できる状件を見出した。このチトクロムb分画を濃縮し、ESRスペクトルを液体ヘリウム温度可変装置を用いて測定した。そのスペクトルは、以前に報告したHigh Spinのシグナルは見られず、またヘム変性に伴って生ずるg=4のシグナルを極力小さく抑えることにより、近接するg=3領域のLow Spinのヘムのシグナルの検出に成功した。以上の結果、白血球膜内のNADPH(O_2^-生成)酵素系に存在するチトクムロb558は、ミエロペルオキシダーゼやヘモグロビンなどのHigh Spin型とは異なるLow Spin型ヘムであり、この酵素系がシアンや一酸化炭素で阻害されない特徴と、理論的には一致することが明らかとなった。
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