研究課題
本年度(第一年次)は個々の作品の細部を調査することにより研究の基礎資料を充実させることにした。1.古代中世研究班・第1班は、仏教尊像の着衣に施された文様と、人間が着た衣服に表現された文様との関連を探る目的で資料収集を始めた。彫刻については、本研究の視点からなる調査が従来はあまり行なわれなく資料が乏しいため、第1班の重点を仏像彫刻調査に置くこととし京都・清凉寺の釈迦如来像、阿弥陀三尊像、兜跋毘沙門天像、同・教王護国寺の講堂諸尊、兜跋毘沙門天像、五大虚空蔵像、同・長講堂の阿弥陀三尊像、同・甘露寺の十一面観音像、奈良・来迎寺の善導大師像、さらに福島・勝常寺の薬師如来像、日光菩薩像、月光菩薩像、十一面観音像その他を調査した。仏画に関しては京都・教王護国寺の両界曼茶羅、五大尊像、京都国立博物館の十二天像など平安仏画の基準作について文様を比較検討し、染織に関しては宮城、片倉家伝来の染織品類を調査することができた。2.古代中世研究班・第2班は、仏画以外の絵画作品や染織以外の工芸作品におけるモチーフを研究する。第1班が人体および人体を形どる仏像に施こされた文様の研究に重点を置いたことに対応させて、高僧像ー俗人と仏像との間に位置する人体像ーに用いられるモチーフを中心に研究を進めるー方、群馬・泉竜寺の白崖宝生禅師像ほかを調査した。金工・漆工については既に公表された多数の作品に関しモチーフの使い方という視点から改めて比較検討を行なった。3.近世近代研究班は、作家研究を深めるにともない主題及びモチーフの意味がより一層明らかにされるという見通しのもとに、洋画家では久米桂一郎、国沢新九郎、鹿子木孟郎、日本画家では橋本雅邦、狩野芳崖等の作品を調査した。各研究班とも基礎資料を更に集めることが必要となったので次年度の前半までは調査研究を続ける予定である。
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