研究課題/領域番号 |
63420001
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
糸魚川 直祐 大阪大学, 人間科学部, 教授 (90027962)
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研究分担者 |
中道 正之 大阪大学, 人間科学部, 助手 (60183886)
吉田 敦也 大阪大学, 人間科学部, 助手 (50191573)
南 徹弘 大阪大学, 人間科学部, 助教授 (40030043)
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キーワード | ストレス / ニホンザル / 妊娠 / 母性行動 / 行動発達 |
研究概要 |
野外集団における観察: 勝山ニホンザル集団(岡山県)の成体雌を対象にして、ストレスが妊娠中の雌の行動に及ぼす影響を、社会行動の変容を指標として明らかにしつつある。安定した直線的優劣順位関係の存在する勝山集団においても、個体が最も密集し、敵対的関わりが生じ易い餌まき場面は、個体に最もストレスをもたらし易い事態と推測される。従って、餌まき場面での個体の行動をVTRカメラによって記録した後、再生画像を詳細に分析すると、劣位の雌ほど頻繁に頭部を動かし周囲に注意を払いながら採食し、かつ移動することも多い傾向が認められた。この事実は劣位雌個体ほど密集した餌まき場面ではストレスが高くなっていることを示唆している。このようなストレスが妊娠中の雌とそうでない雌でどのように異なるのか、また妊娠中にストレスが出産後の母性行動に如何に影響するかは、今後の検討課題である。餌まき場面以外(例えば、休息場面)では、個体間距離は大きくなり、ストレスの指標となる顕著で頻繁に生起する行動は未確認である。 実験室における研究: 大阪大学人間科学部附属比較行動実験施設において飼育中の雄と雌の交配をのべ30ペアで行った。捕獲された後の飼育経験が1年未満で飼育環境下ではストレスが高いと推測される雌と、飼育環境下に数年間以上おかれこの環境に適応してストレスが比較的少ない雌の2グループに分けて行動を比較した。これら2グループ間の行動上の差異は認めがたく、むしろ、雌の年齢と行動に関係があると思われた。しかし、今後、妊娠の進行に伴う行動の変容、及び出産後の母性行動を検討して行くことで、上述の2グループの間で差異を明らかにすることが可能と思われる。
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