メスのチンパンジ-1頭(アイ、推定年齢12歳)に、異質な物の集合を見せて、その部分集合の数を答えることを訓練した。アイはすでに、異質な集合パタンに含まれる物の全部を数えることを学習していた。そこで、赤と緑の積木の混合パタンを呈示し、赤(または緑)と指示された色の物の数に対応する数字を選ぶ、条件性象微的見本合わせ課題が与えられた。総数1から5までの各々における赤と緑の積木の可能なあらゆる組合せパタン(総計20種)のそれぞれについて、ランダムな位置配列による6種の刺激セットが用意された。総数4個の混合パタン(5種)のみで構成された2種の刺激セット(20課題)の学習を19セッションで完成した。その後は、第3番めの刺激セットを加えて11セッション、第4番めを加えて6セッションで完了、第5、6番めを加えて(計60課題)も最初から正答率の低下がほとんどみられず、いずれも3セッションで完了した。しかし次に総数5個の混合パタンへの転移の時に生じた混乱は、アイが、部分集合である赤あるいは緑の積木を数えることを未だ学習していないことを明らかにした。この第1番めの刺激セットの学習は13セッションで約80%の正答率に達し、その後新しい刺激セットを加えても、正答率はそれほど落ちなかった。現在、総数6個の訓練中である。以上の結果から、どれだけ訓練を続ければ、アイが、パタンの特殊性から独立に、集合全体の部分のみを数えることができるようになるのか、未だ予測することはできない。現段階の成功は、もしかしたら、色とパタンと数字の間に非常に複雑な条件性マッチングによっておこなわれたかもしれないからである。しかし少なくとも、次段階として、物の部分集合を用いた加減算の訓練を行うことができる可能性を示唆している。
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